エイジングのすゝめ

2026.06.27

ヨーヨーを地面にぶつけてしまい、傷がついた。

決して安いものではありませんから、新品のヨーヨーに傷がつくとショックですよね。
傷がつくのが嫌で、外ではヨーヨーをしないという方もいらっしゃるかもしれません。

ヨーヨーは使い続けるうちに、傷や錆によって少しずつ見た目を変えていきます。
そうした変化は、しばしば「劣化」としてネガティブに捉えられがちです。
ですが、それを「エイジング」と捉えた瞬間、それまで気になっていた傷や錆が、少し違った意味を持ちはじめます。

自分だけのヨーヨーを育てていく。
そんな感覚で捉え直してみると、新品の頃にはなかった魅力が見えてくるかもしれません。

生地(RAW)

アルミニウム合金製のヨーヨーは、通常、アルマイト加工によって防錆と着色を行って仕上げられます。
しかし、中にはあえてアルマイト加工を施さず、アルミ生地のままにしてある製品も存在します。
生地(RAW)は、アルマイト加工を施したシルバーと比べて、より強い金属光沢を持っているのが特徴です。
新品の状態ではギラギラと光を反射し、圧倒的な存在感を放ちます。

生地のアルミニウム合金は、時間の経過とともに表面が酸化します。
少しずつ白く燻み、やがて燻銀のような落ち着いた風合いへと変化していきます。

また、表面にはわずかなざらつきが生まれます。
スリープロスが軽減し、グラインド系トリックがやりやすくなるなど、使用感にも変化が現れます。

使い込むほどに表情と手触りが変わっていくのも、生地(RAW)の魅力のひとつです。

トリックラボハードモード – Yoyorecreation store
どちらも生地。奥が新品、手前はYYR直営店にゐるの店頭サンプルとして1年半ほど経過したもの。

セラコート

さらりとした、あるいはつるんとした、一見メタルヨーヨーとは思えない質感を持つセラコートのヨーヨー。
表面にはセラミックコーティングが施されており、衝撃が加わるとひび割れや剥離が生じることがあります。

ひび割れや剥離は決して均一には起こりません。
偶然によって生まれるそのパターンは、世界にひとつだけのヨーヨーを作り上げます。

剥がれた部分からは下地のシルバーが覗き、隠れていた金属の表情が現れます。
可愛らしい質感だけではなく、使い込むほどに変化していく様子を楽しめるのも、セラコートの隠れた魅力です。

ブラーオートスコピー – Yoyorecreaton store
三浦ハジメが実際に使用しているもの

マグネシウム

マグネシウムもまた、経年変化によりその表情を変えていきます。
新品時は真っ白な石膏のような質感ですが、時間の経過とともに全体の色味は落ち着いたグレーへと変化し、特有の黒い斑点が現れることで、独特の深い表情を生み出します。
その変化の仕方は、使用頻度や保管環境によって一つひとつ異なります。
どのように育っていくかは使い手次第であり、その向き合い方がそのまま刻まれていきます。

Mgディフュージョン – Yoyorecreation store
左は新品、右はにゐるの店頭サンプルとして1年半ほど経過したもの。

チタン

アルミに比べて非常に硬く、耐食性にも優れるチタン素材。
傷や錆に強い素材ですが、使用を続けるうちに表面には少しずつ細かな傷が生まれます。

無機質なブラスト仕上げの表面も、使い込むほどに表情を帯び、自分だけの風合いへと変化していきます。
経年変化しにくいと思われがちなチタンにも、確かに時間の積み重ねが刻まれていきます。

ケ – Yoyorecreation store
デザイナーの城戸ケンゴが実際に使用している私物。(刻印はケンゴが自分用に施したもの。)

傷や錆、剥離や色の変化。
それらは、そのヨーヨーと過ごした時間の記録。
ひとつとして同じ変化はなく、その表情は持ち主の数だけ存在します。

新品の状態が最も美しいとは限りません。
時間をかけて使い込まれたヨーヨーには、そのヨーヨーだけの美しさが静かに宿っています。

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