2026.02.06

筆者:加藤テツト
長い間、僕はヨーヨーのストリングに対して強いストレスを抱いていました。
僕のトリックは、ストリングの輪を飛ばす「スラック」を多用するため、ストリングを選ぶうえで「飛びやすさ」が最も重要な要素になります。
しかし同時に、ストリングがヨーヨーに何重にも掛かるトリックも多く、「滑りの良さ」も確保しなければなりません。
そのため、長らく細いストリングを使わざるを得ない状況でした。
細くてもよく飛ぶストリングは確かに存在しますが、ヨレやすかったり、過度に硬かったりと、少なくとも現時点では、僕が心から満足できるものには出会えていません。
実用的な柔らかさと、しっかりとした飛びやすさ。
この二つを両立するには、ストリングを太くするしかないという予感がありました。
太いストリングは、細いストリングに比べて屈曲しづらく、ヨリにも強い。
多少毛羽立っても、ストリング自体の重さによって、輪を強引に飛ばすことができます。
ただし、従来のギャップ幅では「滑り」の問題という大きなボトルネックをどうしても解決できず、太いストリングの採用は諦めざるを得ませんでした。
某日、まだ僕がチーム・ヨーヨーリクリエーションに加入する前のことです。
オーナー兼デザイナーの城戸ケンゴ氏が、当時僕の住んでいた北海道・釧路まで、遠方にもかかわらず直接お話をしに来てくださいました。
そこで僕は、長年抱えてきたストリングに関する悩みを、そのままぶつけました。
「もっと太く、もっと重いストリングを使いたい」
「なんなら、従来のストリングの基準を壊してしまうようなストリングが欲しい」
「そのための“軸まわり”を、一から考えたい」
「今までにない太さと重さのストリングで、自分のトリックを完遂できるヨーヨーができたら、まったく新しい世界が見えると思います」
ウィジーシステム(Whizy system)は、新発想のスペーサーと、専用のストリングからなる新機構です。
少し大げさな名前ですが、考え方はとてもシンプルです。
今までにない太さのストリングでも十分な滑りを確保するため、ベアリングの最大幅以上のギャップを実現しています。
セパレーターに傾斜をつけることで、ストリングが引っかかることなく、自然にベアリング側へ落ちる構造になっています。

たったそれだけの工夫。
しかし、このシンプルな機構が、これまで不可能だと思われていた選択肢を現実のものにしました。

フォークは、ウィジーシステムを搭載した最初のヨーヨーです。
加藤テツトのシグネチャーモデルとして開発されましたが、まずはこの新機構を、できるだけ多くのプレイヤーに体験してもらいたいという思いを込めた設計になっています。
構成は、あくまで標準的なスペックのアルミニウム製金属リムヨーヨー。
ボディ素材はPCとPOMの2種類を用意し、重さの違いによって、好みやスタイルに合わせて選べるようにしました。
フォークは完成形というよりも、ウィジーシステムという新しい可能性に触れるための「入口」としてのヨーヨーです。
軸まわりの機構に合わせて、ストリングの開発も行いました。
YYRストリングとハカマタエキップメントから、同時に2種類のウィジーストリングがリリースされます。

両者とも今までにないほど太く設計されたストリングです。
画像で見ると分かりづらいかもしれませんが、実際に触ると、従来のストリングと比べて極端に太いことが分かります。

2種類のウィジーストリングは好みや用途によって使い分けられるように、それぞれ明確に違う使い心地に仕上げました。
・YYRストリング ウィジー
最初はやや硬めの感触ですが、使い込むことで、ちょうど良い柔らかさになるように設計されています。
太いストリングならではの耐久性を活かし、長時間の練習でもヘタらず、安定した飛びを維持してくれます。
・ハカマタエキップメント ウィジー
比較的柔らかい感触のストリングです。指に優しい使用感でありながら、しっかりとした重さがあり、従来のストリングとは明確に異なる飛び性能を体感できます。
また、どちらも共通してあげられるメリットとしては、指とストリングの接地面積が増えて圧力が分散されるため、指が痛くなりにくいことと、細いストリングに比べて耐久性に優れていること。
従来品とは一線を画す、圧倒的な「飛び」性能を体感してください。
ウィジーストリングは、従来のストリングの完全な上位互換というわけではありません。
太さの分だけボディとの摩擦は増えるため、スリープロスはやや大きくなり、ストリングが飛ぶ速度も、細いストリングに比べるとゆっくりになります。
しかし裏を返せば、ゆっくり飛ぶおかげで、ストリングの動きを視認・制御しやすくなり、力をかけるタイミングやトリックの構造を理解しやすくなります。
特に、中級者以降でスラック系トリックに本格的に挑戦していきたいと考えている方にとって、この特性は大きな助けになるはずです。
それぞれのプレイスタイルに合わせて選べる、新しい選択肢のひとつとして、ここに提示します。
ワイドバイメタルがホリゾンタルの水準を引き上げたように、ウィジーシステムなら、スラック系トリックの当たり前を変えられるはず。
由来であるwhizは、風を切る音、そして秀でた能力を持っている人を指す言葉です。
フォークとウィジーストリングが、見たこともないトリックを、新しい才能を、生み出してくれると願っています。